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20081025日リサイタル  曲目解説  (三輪 壮一)

1.バッハ パルティータ第2番

パルティータとは元来「分けられたもの」という意味のイタリア語で、ドイツに伝わって「組曲」(Suite)と同じ意味で使われる様になった。 古典的な組曲は、4つの舞曲(アルマンド、クーラント、サラバンドおよびジーグ)で構成されているが、バッハのパルティータ(全6曲)は、カプリッチョ、アリア、ブルレスカ、スケルツォといった舞曲以外の曲を組み入れると共に、イタリア的な明朗な表現を目指したものとなっている。

作曲は1726年から1731年にかけてライプチヒで行われ、6曲まとめて「クラヴィーア練習曲集第1巻」として出版された。

2番は、シンフォニア、ロンド、カプリッチョを入れた自由な構成が特徴であり、また感傷的で美しい旋律に溢れており、6曲の中でも比較的よく取り上げられる曲である


 ・シンフォニア:荘重な序奏に続き、悲しげで美しい旋律の挿入句を経て、情熱的なフー  ガへと展開していく

・アルマンド:穏やかで感傷的な曲である

・クーラント:フランス風のリズミカルな曲である

・サラバンド:哀愁を湛えた、ゆったりした曲である

・ロンド:短調ながら、軽快で楽しい曲である

・カプリッチョ:最後を締めくくるに相応しい、快活で力強い曲である

2.クロード・ボラン フルートとピアノのための組曲1番   

クロード・ボランは、映画「ジダン」や「ボルサリーノ」など多数のフランス映画の音楽を手がけたフランスの作曲者兼ジャズピアニストである。14歳ですでに演奏活動を始め、デューク・エリントンやアームストロングなどとも共演、6回にわたりディスク大賞に輝いている。

主にジャズ・ポピュラー音楽の分野で活躍した彼だが、クラシック音楽との融合をも試みている。その代表作が、著名なフルーティスト、ランパルのために書かれたこの曲である(チェロのヨーヨーマや、ヴァイオリンのズッカーマンのための作品も書いている)。  ジャズでありながら、フランス的な洒落た雰囲気が漂う佳曲で、特に2曲目の「センチメンタル」は、一度耳にしたら忘れられないほど美しい旋律を持つ。

今日はフルートとピアノのみで演奏されるが、オリジナル曲は他にベースとドラムが加わる。

 ・バロック・エンド・ブルー

・センチメンタル

・ジャワ風

・フーガ

・アイルランド風

・ヴェルサティル (この曲のみバス・フルートを使用)

・ヴェロス

3.ショパン ノクターン 作品48-1, 55-2

アイルランド出身のピアニスト、ジョン・フィールドが創始した「夜想曲」という形式は、一般に左手の和声的な伴奏に乗って右手が甘くせつない旋律を奏でる形を取っている。ショパンは全部で21の夜想曲を作曲したが、今回演奏される2作品は、それぞれ独自の特徴を備えた傑作である。

作品48-1は、ショパンのノクターン全21曲の中の最高傑作と呼んでも過言ではない、深い内容を持つ作品。重々しい葬送行進曲風の主題で開始された後、荘重で静謐なコラール風の中間部に移り、3連符のオクターブを伴う高揚へと展開していく。その後、冒頭の主題が、美しくも痛切な伴奏に支えられて再現され、最後は哀しげな和音で終了する。

作品552は、即興的な趣を持った曲で、流れるような左手のアルペジオの上で奏でられる右手の旋律は実に流麗で美しく、聴く人を恍惚とさせる程の魅力を湛えている。

4.フランク フルート・ソナタ (ヴァイオリン・ソナタより編曲)

ヴァイオリン・ソナタの最高傑作の1つ。ずしりと心に響く、まさに「いぶし銀」のような名曲である。

フランクは、1822年ベルギーのリエージュで生まれたが、13歳の時にパリに移り住み、生涯その地で活動を続けたので、フランスの作曲家と呼んで差し支えないだろう。

フランクの生涯は、カトリックの深い信仰に満ちた地味でつつましやかなものであり、36歳から没するまでパリのサント・クロティル教会のオルガン奏者を務めたという。

ヴァイオリン・ソナタは、円熟期の1886(64)、ベルギーの大ヴァイオリニストであるイザイの新婚のお祝いとして作曲された。

このソナタは全部で4楽章からなるが、第1楽章冒頭、ヴァイオリンに現れる第1主題(ニ〜嬰へ〜ニ)という山型の3つの音符が、このソナタ全体を通じて基本的な役割を果たしている。即ち、この山型の動機が姿形を変えて全楽章に用いられる「循環形式」という手法が採られているのである。

この曲は名曲であるが故に、フルート、チェロ、ヴィオラなどで演奏されることもしばしばである。このリサイタルでは、ランパル/カサドッシュによるフルート編曲版が使用されている。

第1楽章:神秘的で、しかも強い内面性を感じさせる曲

第2楽章:情熱が一気に爆発したような曲。第2主題は一転して優美な曲となる

第3楽章:極めて自由な形式で、幻想的な雰囲気に満ちている

第4楽章:ピアノとヴァイオリンによる優美なカノンで開始される。自由なロンド形式のなかに、これまでのいくつかの主題も回想され、最後は情熱的な高揚のもとに終結する。